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Textile Industry Column糸偏コラム:自由な視点
私の回顧録

2026.03.08:第82回 私の回顧録

グループ企業
〜リアルな仕入れの現場6〜

仕入れの現場にあった、リアルな判断の積み重ね

これまでこの連載では、数回にわたって、私がグループ企業で経験した「リアルな仕入れの現場」についてお話ししてきました。

生地の仕入れというのは、単純に「売れそうなものを買う」という世界ではありません。 お客様の好み、店舗の販売力、価格帯、ブランドの訴求、そして時代の空気感。 さまざまな要素が複雑に絡み合い、その中で「どの生地を、どれだけ仕入れるか」という判断をしていきます。

しかも、それは必ずしも正解があるわけではありません。 売れると思ったものが売れないこともあれば、そこまで期待していなかったものが爆発的に売れることもある。

まさに「結果を見て初めて答えがわかる世界」です。

前回までのコラムでは、そうした仕入れの考え方や、グループ企業としての戦略、そして商品構成の方向性などについてお話してきました。

そして今回。 いよいよ、その仕入れ計画を実際に実行した結果についてお話ししたいと思います。

言ってみれば、ここまで考えてきたことの**“答え合わせ”**です。

リアルな判断

◾️ いよいよ迎えたテストの結果

仕入れ計画の答え合わせ

今までシリーズでご紹介していた「リアルな仕入れの現場」ですが、いよいよ今回が、テスト合わせとも言える仕入計画実行の結果についてのお話になります。

仕入れという仕事は、計画を立てることも重要ですが、それ以上に大切なのは実際の結果をどう受け止めるかです。

思った通りに売れたのか。それとも予想と違ったのか。そして、なぜそうなったのか。

それを一つ一つ振り返りながら、次の仕入れに活かしていく。この繰り返しこそが、仕入れの仕事の本質だと思っています。

ちなみに、今この原稿を書きながら、ちょうどテレビではWBCをやっています。野球の試合を見ながら書いているのですが、これがまた、仕入れの仕事とどこか似ているように感じます。

データも大事。でも最後は勝負勘。

そんなことを思いながら、この原稿を書いています。

結果

◾️ 不動の主軸

無地という存在

まずは、主軸の無地の生地についてです。

これはもう、何度も言ってきましたが、スーツの世界では無地は絶対的な存在です。

柄物は流行があります。ストライプもチェックも、その時代ごとの流れがあります。

しかし無地は違います。

時代が変わっても、ビジネスの現場が変わっても、必ず必要とされる存在です。

今回の仕入れでも、もちろん無地は主軸として考えました。

しかも、かなり意識して、「少し多いのではないか」というくらい攻めて仕入れをしたつもりでした。

ですが――それでも足りませんでした。


◾️ 予想を超えた需要

紺無地がショートするという現実

特にエントリーモデルの紺無地です。

これは完全にショートしてしまいました。

つまり、売れすぎて在庫がなくなったということです。

しかも、予想を遥かに上回るペースでした。

「ここまで売れるのか…」

正直、そう思いました。

もちろん、ネイビーのスーツは王道です。ビジネススーツの基本とも言える色です。

ですが、それを分かっていてもなお、予想を超える結果でした。

これは、グループ企業の仕入れを始めたばかりの頃の、大きな教訓になりました。


◾️ 侮れない存在

たかが無地、されど無地

この経験で改めて思ったことがあります。

それは、無地は本当に侮れないということです。

派手な柄は目立ちます。展示会でも注目されます。

しかし、実際に売上を支えているのは、多くの場合無地なのです。

一見地味。でも確実に売れる。

だからこそ、「たかが無地、されど無地」という言葉がぴったりだと思いました。

侮れない存在

◾️ データがないという難しさ

そして意外なメリット

当時の仕入れで苦労したのは、データがなかったことです。

過去の販売データが十分にあるわけではありませんでした。

どれくらい売れるのか。どの色が強いのか。どの価格帯が動くのか。

それをすべて手探りで考えていく必要がありました。

これは本当に大変でした。

ですが、後になって思うと、データがないことのメリットもありました。

データがあると、どうしても安全な判断をしてしまいます。

しかしデータがないと、「やってみるしかない」という状況になります。

結果として、攻める部分は思い切って攻めるという判断ができたのです。


◾️ 王道カラーの変化

ネイビーとグレーの明暗

スーツの王道カラーといえば、ネイビーとグレー。この二つです。

グループ企業の仕入れを始めた頃も、当然この二つが中心でした。

しかし、結果を見てみると、ここに明確な差が出ました。

それが、ネイビー > グレーという結果です。

ネイビーの売れ方が圧倒的でした。


◾️ かつて元気だったグレー

変化していく市場

実は、その少し前までは、グレー系もかなり元気がありました。

品揃えを考えるときには、同じ柄でも濃いグレー、ミディアムグレー、ライトグレーというように、濃淡でバリエーションを作ることもありました。

それくらい、グレーにも需要があったのです。

しかし、時代の流れでしょうか。

ある時期から、グレー系の勢いが少しずつ弱くなっていきました。

その結果、残った在庫を見ると、グレーが圧倒的に多いという状態になりました。


◾️ 売上の半分以上は紺

品揃えの中心になる色

その後の仕入れでは、品揃えのバランスを調整するようになりました。

例えば、紺2色、グレー1色。

あるいは、紺2色、茶系または黒系1色というような構成です。

体感的には、売上の5割以上が紺系だったと思います。

もちろん、店頭の品揃えとしてはバランスも大切です。

ですから単純に紺だけにするわけにはいきません。

そのため、奥行き(数量)で調整するという方法を取っていました。


◾️ 無地に見える柄

目立たない柄の重要性

もう一つ面白い変化がありました。それは柄物の動きです。

ストライプ柄は、ビジネススーツの代表的な柄です。

ですから、当然売れることもありました。

しかし、仕入れを続けていく中で、かなり厳しい時期もありました。

その時に増やしたのが、無地ライクな素材です。

例えば、ドビー、ヘリンボーン、シャドーストライプ、小さなチェックなどです。


◾️ 遠くから見ると無地

現代のビジネススーツ

これらの生地は、近くで見ると柄がある。でも遠くから見ると無地に見える。そんな特徴があります。

つまり、主張しすぎない柄です。

ビジネスの場では、このバランスが非常に重要です。

結果として、一見無地に見える生地の比率は、年々高くなっていきました。


◾️ 次回予告

まだ語れていない結果

今回はこれでお終いです。

ただ、まだまだお伝えできていない具体的な結果があります。

仕入れという仕事は、本当に奥が深い世界です。

次回は、その続きをもう少し詳しくお話ししていきたいと思います。

どうぞ楽しみにしていてください。

乞うご期待。



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