2026.03.09:第83回 私の回顧録
グループ企業
〜リアルな仕入れの現場7〜
仕入れ計画の答え合わせ
前回のコラムでは、私がグループ企業で経験した仕入れ計画について、その「答え合わせ」という視点から振り返りました。
計画を立てることはもちろん大切ですが、本当に難しいのは、その結果をどう評価するかという点です。
売れたのか、売れなかったのか。
在庫は適正だったのか、それとも過剰だったのか。
一見すると数字で判断できそうですが、実際の現場では、そこまで単純な話ではありません。
今回は、その「答え合わせ」をさらに深く掘り下げてみたいと思います。
つまり、「仕入れ計画の正解とは何か」という問いについて、改めて考えてみたいと思います。
◾️ 不動の主軸としての「無地」
まず、前回触れた「不動の主軸の無地」についてです。
私が仕入れ計画を考える際、中心に据えていたのは無地でした。
これは、結果から見ても間違いではなかったと思っています。
理由は単純です。
無地は、確実に売れる。
ビジネスの世界では、
「確実に売れる商品」
というのは、それだけで大きな価値があります。
しかもスーツという商品においては、
「まず一着目」
として選ばれるものの多くが、無地だからです。
そう考えると、無地を主軸に据えることは、非常に合理的な判断だったと言えるでしょう。
◾️ しかし、本当にそれでいいのか
ただ、仕入れの現場に長くいると、こんな疑問も浮かんできます。
無地ばかり売っていて、本当にいいのだろうか。
もちろん、売れる商品を仕入れるのはバイヤーの基本です。
しかし、売れる理由が
「無地だから」
なのか、
それとも
「柄物が弱いから」
なのか。
ここは、意外と曖昧な部分でもあります。
もし後者だとしたら、
それは単に「無地が強い」のではなく、
「柄物の提案力が弱い」
という可能性もあります。
そう考え始めると、
単純に売上だけで判断することの難しさが見えてきます。
◾️ しかし、本当にそれでいいのか
ただ、仕入れの現場に長くいると、こんな疑問も浮かんできます。
無地ばかり売っていて、本当にいいのだろうか。
もちろん、売れる商品を仕入れるのはバイヤーの基本です。
しかし、売れる理由が
「無地だから」
なのか、
それとも
「柄物が弱いから」
なのか。
ここは、意外と曖昧な部分でもあります。
もし後者だとしたら、
それは単に「無地が強い」のではなく、
「柄物の提案力が弱い」
という可能性もあります。
そう考え始めると、
単純に売上だけで判断することの難しさが見えてきます。
◾️ 王道カラーの存在
次に考えるのは、カラーの問題です。
スーツの基本カラーと言えば、
・ ネイビー
・ グレー
この二つは、まさに王道と言える色です。
私が仕入れを始めた頃は、ここにブラックが加わり、
・ ネイビー
・ グレー
・ ブラック
この三本柱が基本でした。
◾️ 時代によって変わる売れ筋
ところが、長く仕事をしていると、売れ筋の変化が見えてきます。
ある時期は、
グレーが圧倒的に強い
という時代がありました。
また、2000年代に入ると、
ブラックスーツの需要
がかなり増えました。
特にリクルート用途では、ブラックが主流だった時期もあります。
しかしその後、就活のスーツも次第にネイビーが主流になっていきました。
◾️ 王道の中にもある変化
つまり、ここで分かるのは、王道は存在するが、その中のバランスは常に変化しているということです。
ネイビーもグレーも定番ですが、その比率は固定ではありません。
例えば、
・ ある年はグレーが強い
・ ある年はネイビーが強い
・ ブラックの需要が突然伸びる
こうした変化が、必ず起こります。
バイヤーは、その微妙な流れを読み取る必要があるのです。
◾️ そもそも仕入れ計画の正解とは
ここで改めて考えてみたいのが、仕入れ計画の正解とは何かという問題です。
いくつかの考え方があります。
例えば、
売上が目標を超えれば成功
という考え方。
これは、とても分かりやすい基準です。
会社としては、当然この視点が重要になります。
◾️ 計画通りが正解なのか
一方で、こんな考え方もあります。
計画通りに進めることが正解という考え方です。
例えば、
・ 計画100
・ 実績100
であれば、計画は完璧だったと言えるでしょう。
しかし実際のビジネスでは、
ここまで綺麗に揃うことはほとんどありません。
◾️ 理想形は「需要100=供給100」
理想を言えば、
需要100に対して供給100
これが最も美しい形です。
在庫も残らず、
チャンスロスもない。
まさに理想的な仕入れです。
しかし、現実にはほとんど起こりません。
◾️ 売れたけれど在庫が残るケース
例えばこんなケースがあります。
需要100に対して
供給120。
結果として、
105%売れた。
売上は伸びました。
しかし、
在庫が15残った。
店舗から見れば、売上は良い結果です。
しかしバイヤーの立場では、在庫を残したという評価になります。
◾️ 在庫はないが売上を逃すケース
逆にこんなケースもあります。
需要100に対して
供給80。
結果は、
売上80%
しかし、在庫はゼロです。
この場合、
・ 売上は未達
・ 在庫は完璧
という結果になります。
◾️ 店舗とバイヤーの視点の違い
ここで出てくるのが、店舗の正解とバイヤーの正解の違いです。
店舗の視点では、「もっと商品があれば売れた」という評価になります。
つまり、供給120の方が嬉しい。
一方で、バイヤーは「在庫を残さない」ことを重要視します。
つまり、供給80の方が評価される場合もあります。
◾️ 売れる商品だけでは売れない
さらにもう一つ重要な要素があります。
それは、集客です。
どれだけ良い商品があっても、
お客様が来店しなければ売れません。
これは、バイヤーの努力だけではどうにもならない部分でもあります。
◾️ 集客を生む商品も必要
しかし、逆に言えば、商品が集客を生むというケースもあります。
例えば、
・ 魅力的な新素材
・ 話題性のある企画
・ 季節感のある提案
こうした商品は、お客様を呼ぶ力を持っています。
つまり仕入れは、
単なる在庫補充ではなく、
店の魅力を作る仕事
でもあるのです。
◾️ 仕入れ計画を左右する要素
こうして考えてみると、仕入れ計画の評価には、実に多くの要素があります。
例えば、次のようなものです。
・ 売上達成率
・ 粗利率
・ 在庫回転率
・ 在庫残高
・ チャンスロス
・ 店舗の満足度
・ 商品の鮮度
・ トレンド対応力
・ シーズンの適合度
・ 価格帯のバランス
・ ブランド価値
・ 集客効果
・ 競合との差別化
こうした商品は、お客様を呼ぶ力を持っています。
◾️ それぞれの評価基準
例えば、
売上達成率
→ 目標を何%達成したか
在庫回転率
→ どれだけ早く商品が動いたか
チャンスロス
→ 売れる機会をどれだけ逃したか
集客効果
→ 商品が来店動機になったか
このように、それぞれに別の評価軸があります。
つまり、正解は一つではないのです。
◾️ 答え合わせの難しさ
そう考えると、
「仕入れの答え合わせ」
というものは、実に難しいものです。
数字だけでは判断できない。
しかし感覚だけでも判断できない。
その中で、バイヤーは常に
仮説と検証
を繰り返していきます。
◾️ 仕入れという仕事の本質
長年この仕事をしてきて感じるのは、
仕入れという仕事は、
未来を予測する仕事
だということです。
しかも、その未来は、
天候
景気
トレンド
社会の空気
などによって簡単に変わります。
つまり、
不確実性の中で決断する仕事
なのです。
◾️ それでも答えを探し続ける
だからこそ、バイヤーは毎シーズン、
・売れた理由
・売れなかった理由
・在庫の意味
を考え続けます。
そしてまた、次の仕入れに向かいます。
この繰り返しが、
仕入れという仕事なのだと思います。
◾️ 最終的にたどり着くもの
こうして様々な要素を考えていくと、
最後に行き着く答えは、
やはり
バランス
という言葉になるのかもしれません。
売上だけでもなく、
在庫だけでもなく、
トレンドだけでもない。
そのすべてを見ながら、
最も良い着地点を探す。
それが仕入れ計画なのだと思います。
◾️ もう一つのリアルな結論
ただ、現場で感じるもっとリアルな結論もあります。
それは、
「完璧な仕入れは存在しない」
ということです。
必ず
・ 売れすぎる商品
・ 売れ残る商品
が生まれます。
そして、その結果を見ながら、
「次はこうしよう」
と考える。
仕入れとは、
常に次の答えを探し続ける仕事
なのだと思います。
◾️ 次回予告
ここまで、仕入れ計画の「正解」について考えてきました。
売上、在庫、チャンスロス、集客力、トレンド…。
様々な要素が絡み合う中で、仕入れの答えを一つに決めることは簡単ではありません。
しかし、現場では考えているだけでは済みません。
最終的には、どこかで決断をしなければならないのです。
仕入れという仕事は、言い換えれば「決断の仕事」です。
しかもその決断は、結果が出るまで正解かどうか分からないという、なかなか厳しい世界でもあります。
では実際の現場では、バイヤーはどのようにして仕入れを決めていくのか。
数字なのか、経験なのか、それとも勘なのか。
次回は、
仕入れ計画を実際の発注に落とし込むプロセス
もう少しリアルな現場の話をしてみたいと思います。
「計画」と「決断」のあいだにあるもの。
そこにこそ、バイヤーの仕事の本質があるのかもしれません。
次回も、ぜひお付き合いください。