仕入れ編
〜生地の見本市〜
みなさん、こんにちは。
前回のコラムでは、日本各地の繊維産地との関わりについてお話ししました。 産地を訪れ、現場を見て、職人の声を聞く。 そうした体験が、仕入れという仕事の軸を作ってくれたことは間違いありません。
ただ、産地と向き合う中で、もう一つ欠かせない存在があることにも気づきました。 それが、生地の見本市です。
見本市は、 産地と産地を横断し、 過去と未来をつなぎ、 業界全体の空気を感じ取れる場所でもあります。

仕入れ編
〜生地の見本市〜
みなさん、こんにちは。
前回のコラムでは、日本各地の繊維産地との関わりについてお話ししました。 産地を訪れ、現場を見て、職人の声を聞く。 そうした体験が、仕入れという仕事の軸を作ってくれたことは間違いありません。
ただ、産地と向き合う中で、もう一つ欠かせない存在があることにも気づきました。 それが、生地の見本市です。
見本市は、 産地と産地を横断し、 過去と未来をつなぎ、 業界全体の空気を感じ取れる場所でもあります。

◾️ 生地の仕入れと、見本市の関係
生地の仕入れを行ううえで、 見本市は非常に重要な存在です。
最新の素材に触れることができる。 各産地の動きを俯瞰できる。 業界全体が、今どこに向かっているのかを感じ取れる。
日々の業務の中だけでは得られない情報が、 見本市には集約されています。
単なる「展示」ではなく、 情報と感覚の交差点。 それが、私にとっての見本市でした。
◾️ 初めての見本市「ジャパンクリエーション」
私が初めて生地の見本市を訪れたのは、 「ジャパンクリエーション」でした。
時期は2004年頃だったと記憶しています。 取引先から上司が招待状をいただき、 その上司に同行する形で足を運びました。
会場は、お台場の東京ビッグサイト。 初めて足を踏み入れたときの印象は、 今でもはっきり覚えています。
とにかく、広い。 そして、人が多い。 無数に並ぶブース。 壁一面に掛けられた生地サンプル。
「これは、一体どこから見ればいいんだろう」
そんな戸惑いと、 少しの高揚感が入り混じった感覚でした。

◾️ ジャパンクリエーションという存在
ジャパンクリエーションは、 2000年に日本の繊維産業の発展を目的としてスタートしました。
国内のテキスタイルメーカーが、 自社の新素材や技術を発表し、 国際的な競争力を高めていくための場。
尾州、桐生、西脇、福井、今治など、 日本を代表する繊維産地が一堂に会します。
ウール、コットン、シルク、合繊、 そして機能性素材。
「日本の生地」が持つ幅広さと奥行きを、 一度に体感できる場所でした。
◾️ 圧倒された、最初の一周
最初は、とにかく会場を一周するだけで精一杯でした。
知らない産地名。 聞き慣れない加工技術。 初めて触れる質感。
正直に言えば、 理解できていないものの方が多かったと思います。
それでも、 生地を手に取り、 説明を聞き、 メモを取る。
その繰り返しの中で、 少しずつ「見本市の見方」が分かってきました。
◾️ 見本市の醍醐味は、手で感じること
見本市の最大の魅力は、 やはり実際に生地を手に取れることです。
カタログや写真では分からない、 重さ、しなやかさ、反発感。
指先で触れた瞬間に伝わってくる情報は、 数字や言葉以上に雄弁です。
「この生地は、秋冬向きだな」 「これは、肌に直接触れる用途が良さそうだ」
そんな判断が、 自然とできるようになります。
◾️ 作り手の言葉を、直接聞ける場所
もう一つ、見本市ならではの価値があります。 それは、作り手と直接話せることです。
なぜこの素材を作ったのか。 どこにこだわったのか。 どんな用途を想定しているのか。
ブースに立つ担当者の言葉には、 生地帳には載っていない背景が詰まっています。
その背景を知ることで、 生地は単なる「素材」から、 「意味を持った存在」に変わっていきます。
◾️ 世界の目が集まる場所
ジャパンクリエーションの会場には、 国内だけでなく、 海外からのバイヤーも多く訪れていました。
英語やフランス語が飛び交う光景を見て、 「日本の生地は、世界とつながっているんだ」 と、実感したのを覚えています。
日本の技術が、 どのように世界で評価されているのか。 その一端を、肌で感じられる場所でもありました。
◾️ バイヤーとしての視点が、少し変わった
私自身、小売業時代にもバイヤーを務め、 さまざまな展示会を経験してきました。
ただ、ジャパンクリエーションは、 それまでの展示会とは少し違っていました。
「完成品」を見るのではなく、 「可能性」を見る場所。
この生地が、 どんな服になるのか。 どんな人に届くのか。
想像力が試される場だったように思います。
◾️ 商談の場としての見本市
見本市は、 情報収集の場であると同時に、 実際の商談の場でもあります。
その場でサンプルを発注し、 条件をすり合わせ、 次のシーズンに向けた動きが始まる。
会場の熱気は、 そのまま業界のエネルギーでした。
◾️ 繰り返し訪れることで見えてきたもの
何度かジャパンクリエーションに足を運ぶうちに、 少しずつ見え方が変わってきました。
「今年は、この産地が元気だな」 「この素材、去年より進化している」
点だった情報が、 線になり、 やがて流れとして見えてくる。
見本市は、 継続して見ることで、 初めて意味を持つ場所なのかもしれません。
◾️ 会場が変わっても、変わらないもの
ジャパンクリエーションは、 東京国際フォーラムや東京ビッグサイトなど、 開催場所を変えながら続いてきました。
会場が変わっても、 根底にある目的は変わりません。
それは、 日本の繊維の力を、 内外に発信すること。
私にとっては、 常に「原点を思い出させてくれる場所」でした。

◾️ 見本市は、未来を感じる場所
見本市は、 今を知る場所であると同時に、 未来を感じる場所でもあります。
環境配慮型素材の増加。 機能性へのニーズ。 サステナブルという言葉の浸透。
業界の変化は、 まず見本市に現れます。
その変化を、 肌で感じることができるのが、 見本市の魅力です。
◾️ 日本の繊維産業は、まだ続いていく
よく、 「日本の繊維産業は終わった」 と言われることがあります。
けれど、 見本市に足を運ぶたび、 私はそうは思えませんでした。
形を変えながら、 規模を変えながら、 確実に進化している。
それを証明しているのが、 見本市の現場だと思います。
◾️ 仕入れという仕事の、もう一つの側面
仕入れとは、 単にモノを選ぶ仕事ではありません。
情報を集め、 流れを読み、 未来を想像する仕事。
見本市は、 その力を鍛えてくれる場所でした。
◾️ 次回予告
次回は、 JITAC(ジタック)についてお話しします。
一般社団法人 JITAC (旧・日本輸入繊維代理店協会)が主催する、 海外輸入生地の見本市です。
国内生地とはまた違った視点から、 生地を見る体験について、 お伝えできればと思います。
どうぞ、次回もお楽しみに。
◀︎◀︎◀︎ 【2026年2月5日】 【2026年2月7日】 ▶︎▶︎▶︎
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