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Textile Industry Column糸偏コラム:自由な視点
私の回顧録

2026.01.27:第42回 私の回顧録

仕入れ編
〜ホームページ 影響を受けたこと〜

みなさん、こんにちは。
今回も「糸偏コラム」にお越しいただき、ありがとうございます。

前回は、ホームページを「運営すること」から一歩踏み込み、「販売」という現実的なテーマについてお話ししました。 仕組みを整え、試行錯誤を重ねながら、どうすれば生地や洋服の魅力がきちんと伝わるのか。その問いと向き合い続けた日々を振り返った回でした。

そして今回は、少し時間をさかのぼりながら、「そもそも、なぜ私はあのホームページを作ろうとしたのか」「何に影響を受けて、あの形になっていったのか」という、原点に近いお話をしたいと思います。

テーマは 「ホームページに影響を受けたこと その1

いくつかある中で、今回は特に印象深い出来事をひとつ取り上げます。 それは、一枚の招待券から始まった、ある出会いでした。

ギフトショー

◾️ 一枚の招待券が、視野を広げた

当時、私は日々の仕事に追われながらも、どこかで「このままでいいのだろうか」という思いを抱えていました。 仕入れの仕事は好きでしたし、生地や洋服への情熱も揺るぎないものがありました。ただ、その魅力をどう伝えるかについては、正直なところ、まだ明確な答えを持っていなかったのです。

そんなある日、取引先の出版社さんから、ギフトショーの招待券をいただきました。 「せっかくだから、何かのヒントが見つかればいいな」 そんな軽い気持ちで足を運んだのが、この日の始まりでした。


◾️ ギフトショーでの刺激

ギフトショーの会場に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が一変します。 所狭しと並ぶブース、人、人、人。 ハンドメイド、クラフト、雑貨、ライフスタイル提案……。

そこには、「作ること」「伝えること」「売ること」が、ぎゅっと凝縮された世界が広がっていました。

正直に言えば、最初は少し圧倒されました。 ですが同時に、「ああ、みんなこんなにも工夫して、自分たちの世界観を伝えようとしているんだな」という、前向きな刺激も受けたのです。


◾️ そのブースは、少し違って見えた

数多くのブースを見て回る中で、ふと足が止まった場所がありました。 それが、全国展開をしている洋裁教室のブースでした。

遠目にも、どこか雰囲気が違う。 決して派手ではないのに、人が集まり、楽しそうな空気が流れている。 私は自然と、そのブースに引き寄せられていました。


◾️ 私が持っていた「洋裁教室」のイメージ

当時の私にとって、「洋裁教室」とはどこか敷居の高い存在でした。 個人で運営され、静かな教室で、先生が一人。 生徒さんは黙々と作業をし、製図から始まり、完成までに長い時間がかかる。

決して悪いイメージではありません。 むしろ、丁寧で本格的な世界です。 ただ、初心者が気軽に足を踏み入れるには、少し勇気がいる場所でもありました。


◾️ 規模感への、素直な驚き

ところが、目の前にあった洋裁教室は、私の想像とはまったく違いました。

まず驚いたのは、その規模。 全国に教室を展開し、仕組みとして成り立っている。 「洋裁教室=小規模」という思い込みが、一瞬で崩れました。

そして、次に気づいたのが、その“中身”でした。

全国展開

◾️ ニットに特化するという発想

この洋裁教室は、ニット、つまりカットソー素材に特化していたのです。 ロックミシンを使い、Tシャツや簡単なトップスを中心に作る。 そのコンセプトが、非常に明確でした。

布帛ではなく、ニット。 ここに、私は大きなヒントを感じました。


◾️ 「難しい」を前提にしない

一般的な洋裁の入り口は、どうしても「難しそう」になりがちです。 製図、裁断、芯貼り、縫製工程……。 覚えることが多く、完成までに時間がかかる。

でも、ニットであれば、話は変わります。 型紙があれば、比較的短時間で形になる。 ロックミシンのスピード感もあり、「作れた」という実感をすぐに得られる。

この教室は、その点をとてもよく理解していました。


◾️ ハードルを下げるという、立派な戦略

私はそのブースを見ながら、強く感じたことがあります。 それは、「ハードルを下げることは、決して妥協ではない」ということでした。

むしろ、 「まず楽しんでもらう」 「成功体験を持って帰ってもらう」 そのための、立派な戦略だったのです。


◾️ 体験型の価値

ふと頭に浮かんだのは、観光地の陶芸体験でした。 ろくろを回し、少し歪んだ器を作り、それでも「自分で作った」という喜びを持ち帰る。

この洋裁教室も、まさにそれでした。 完成度よりも、体験。 技術よりも、楽しさ。

その価値観が、ブース全体から伝わってきました。

体験型が楽しい

◾️ 「伝え方」で、世界は変わる

私はそのとき、はっきりと気づきました。 洋裁そのものが難しいのではない。 伝え方が、難しくしているだけなのではないか

そして同時に、 「これは、ホームページにも通じる話だ」 そう直感したのです。


◾️ 私の中で、何かが動き出した

ギフトショーからの帰り道、頭の中はずっとその洋裁教室のことでいっぱいでした。 「自分だったら、どう伝えるだろう」 「生地の楽しさを、もっと気軽に感じてもらうには?」

その問いが、ぐるぐると回り続けていました。


◾️ 企画という形にするために

考え続ける中で、少しずつ輪郭が見えてきました。 それが、後に形になる企画へとつながっていきます。


◾️ 「パパソー」という、少し照れくさい挑戦

そのひとつが、「パパソー」でした。 名前の通り、「男の私でも洋裁ができる」というメッセージを込めた企画です。

決して、私が特別に器用だったわけではありません。 むしろ、初心者としての目線を大切にしたかった。

「こんな私でもできるなら、あなたにもできる」 その空気感を、あえて前面に出したのです。


◾️ ユニークさは、目的ではなかった

よく「ユニークですね」と言われることもありました。 ですが、私自身は、奇をてらったつもりはありません。

ただ、 「わかりやすく伝えたかった」 「近く感じてもらいたかった」 それだけでした。

結果として、それが少しユニークに映っただけなのだと思います。


◾️ ホームページという、もう一つの教室

気づけば、私の中でホームページは、 「売る場所」ではなく、 「伝える場所」 そして、 「一緒に体験する場所」 になっていきました。


◾️ 画面越しに生地を選ぶ“使い手”へ

生地は、触らなければわからない。 これは今でも変わらない事実です。

だからこそ、 画面の向こうで生地を選ぶ人に向けて、 言葉で、写真で、体験談で、 少しでもその感触に近づけたいと思うようになりました。

その姿勢は、この洋裁教室との出会いから、 確実に育っていったのだと思います。


◾️ ホームページがくれた、自信

振り返ると、あの出会いは、 「この方向でいいんだ」と背中を押してくれる出来事でした。

売り方も、伝え方も、正解は一つではない。 自分たちらしい形を、探していい。

そう思えるようになったのです。


◾️ まとめ:影響は、静かに、でも確かに

今回は、ホームページ作りに影響を与えた出来事のひとつ、 ギフトショーで出会った洋裁教室についてお話ししました。

派手な出来事ではありません。 ですが、私の中では、確実に大きな転換点でした。


◾️ 次回予告

次回は、「ホームページに影響を受けたこと その2」として、 また別の角度から、私の価値観を形づくった出来事をお話しします。

少し視点は変わりますが、 きっと、今の「TexStylist」にもつながる話になるはずです。

どうぞ、次回もお付き合いください。



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