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Textile Industry Column糸偏コラム:自由な視点
私の回顧録

2026.01.26:第41回 私の回顧録

仕入れ編
〜ホームページ ネット販売〜

みなさん、こんにちは。
前回の糸偏コラムでは、2004年に立ち上げたホームページを、13年間にわたってどのように運営してきたのか、その日常と裏側についてお話ししました。

立ち上げるまでの苦労、続けることの難しさ、そして人とのつながり。 振り返ってみると、ホームページは単なる「情報発信の場」ではなく、私にとって仕事そのものを映し出す鏡のような存在だったと感じています。

そして今回は、その延長線上にある「ホームページでのネット販売」についてお話しします。

ホームページで商品を売る。 今でこそ当たり前のように聞こえる言葉ですが、当時の私たちにとっては、決して簡単な選択ではありませんでした。

それは単に販売チャネルを増やすという話ではなく、 これまで築いてきた関係性をどう守り、どう広げていくのかという、非常に繊細なテーマでもあったのです。

ネット販売

◾️ ホームページは「売るため」に使えるのか

ホームページを立ち上げた当初、私の中には二つの思いがありました。

ひとつは、 「せっかく作ったのだから、販売にも活かしたい」という、実務的な視点。

もうひとつは、 「売ることだけが前に出過ぎると、このサイトらしさが失われてしまうのではないか」という不安でした。

洋裁を楽しむ人に向けて、生地の魅力や服作りの面白さを伝えたい。 その気持ちが強かったからこそ、 “売る”という行為を、どうホームページの中に組み込むかは、かなり悩んだポイントでした。


◾️ もともと通販会社だった、という強み

とはいえ、私たちには一つ、大きなアドバンテージがありました。

それは、 もともと通販を行っている会社だったということです。

電話やFAXでの受注、カタログ発送、代引きや銀行振込での決済。 こうした仕組みは、すでに社内に根付いていました。

そのため、ホームページに
・ ショッピングカート機能
・ クレジットカード決済
・ 銀行振込
・ 代金引換
といった仕組みを導入すること自体は、比較的スムーズに進めることができました。

「技術的にはできる」

ただし、 「それをどう使うか」は、まったく別の話だったのです。


◾️ 最大の壁は「価格を出せない」こと

ホームページでのネット販売を考えるうえで、最初にぶつかった大きな壁。

それが、 価格をどう扱うかという問題でした。

私たちの既存顧客は、 洋装店や洋裁教室、プロとして生地を扱う方々です。

その方々にとって、仕入れ価格はビジネスの根幹。 それをネット上で誰でも見られる形にしてしまうことは、 信頼関係を壊しかねない行為でした。

そこで私たちは、 ホームページ上では価格を非公開とし、 既存のお取引先様には、従来通りサンプル帳やカタログを使って受注する、という形を取りました。

正直に言えば、 「せっかくネットなのに、もどかしいな」と感じる場面も多々ありました。

ですが、 これまでのお客様を守ること これは、絶対に譲れない一線でもあったのです。


◾️ ホームソーイング向け販売という挑戦

一方で、ホームページを立ち上げる少し前に出会ったのが、 趣味として洋裁を楽しむ、いわゆる「ホームソーイング」のお客様でした。

この方々に向けては、
・ 価格を明示し
・ 少量で購入でき
・ 用途が分かりやすい
商品構成を意識しました。

サンプル発送後に、 「この生地、まだありますか?」 「おすすめはどれですか?」 といったお問い合わせをいただくことも増え、 ホームページ上で
・ 品切れ情報
・ 入荷情報
・ おすすめ商品の紹介
を発信するようになっていきました。

ここでようやく、 ホームページと販売が、少しずつ噛み合い始めた そんな感覚が生まれたのを覚えています。


◾️ 二つの顧客層のあいだで揺れた日々

ただ、この時期は常にジレンマとの戦いでもありました。

・ 既存のプロ向け顧客
・ 新しく増えてきたホームソーイング層
求められるものも違います。

どちらかに寄り過ぎれば、 もう一方が離れてしまう。

そのバランスを取り続けることは、 想像以上に神経を使う作業でした。

「このやり方で、本当にいいのか」

自問自答を繰り返しながら、 少しずつ形を探っていったのです。

ジレンマ

◾️ BtoBサイト立ち上げという一つの答え

そんな中、2011年4月1日。

私は、 アパレル向けのBtoBサイトを新たに立ち上げました。

このサイトでは、
・ 1反単位での販売
・ 用途や条件に合わせた生地探し
・ 相談ベースでの提案
を軸に据えました。

「こんな生地を探している」 「この用途に合うものはあるか」

そうした声に対して、 ネットを入口にしつつ、 人を介して対応する。

オンラインとオフラインの中間のような立ち位置が、 結果的に、私たちらしい形だったのかもしれません。

BtoB

◾️ タイムリーに伝える、ということ

同じ頃、 ブログ機能を使った情報発信にも力を入れ始めました。

週ごとのおすすめ商品を紹介し、 そのままカートで購入できる仕組み。

今でこそ当たり前ですが、 当時は手探り状態でした。

それでも、 「今、これがあります」 「この季節なら、これが使いやすい」

そうしたタイムリーな情報が、 お客様の行動を後押ししてくれることを、 実感するようになりました。


◾️ ホームページ販売で学んだこと

振り返ってみると、 ホームページでの販売を通じて学んだことは、 決して「売上」だけではありません。

・ 誰に向けて発信しているのか
・ どんな距離感が心地いいのか
・ 何を守り、何を変えるのか

こうした問いに、 何度も向き合う時間でした。

そして何より、 生地や洋服に対する自分のスタンスを、 改めて確認する機会でもあったのです。


◾️ 売ることは、伝えること

ホームページ販売を経験して、 強く感じるようになったことがあります。

それは、 売ることは、伝えることの延長にあるということです。

価格だけを並べても、 生地の魅力は伝わらない。

背景や使い方、 そこから生まれる服のイメージ。

それらをきちんと伝えてこそ、 「買う」という行為につながる。

その原点を、 ホームページは何度も思い出させてくれました。


◾️ 次回に向けて

こうして振り返ると、 ホームページでの販売は、 私にとって大きな挑戦であり、 同時に多くの学びを与えてくれた存在でした。

次回は、 ホームページを開設するうえで、 私自身が影響を受けたことや、 参考にしていた考え方について、 少しずつお話ししていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 次回も、どうぞよろしくお願いいたします。



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