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Textile Industry Column糸偏コラム:自由な視点
私の回顧録

2025.12.31:第15回 私の回顧録

職探し
〜第二章スタート〜

こんにちは。
糸偏コラム「私の回顧録」をご覧いただきありがとうございます。

気づけばこの連載も第15回。
こうして振り返ると、ひとつひとつの出来事は決して派手ではないものの、どれも私の人生や仕事観を形づくる大切な“糸”だったように思います。

今回のテーマは「職探し」。
人生の中で誰もが一度は向き合う、大きな転機です。

私にとってこの時期は、単なる再就職活動ではなく、 「自分はこれから、何と向き合って生きていくのか」 を改めて考える時間でもありました。

今振り返ると、この回はまさに 糸偏人生・第二章のスタート地点。 そんな節目の記録として、少し丁寧にお話ししていきたいと思います。

ハローワーク

◾️ 前職を辞めたあとに残った、不思議な空白

前職を辞した直後。 解放感に包まれるかと思いきや、実際に心に残ったのは、 ぽっかりと穴が空いたような感覚でした。

時間はある。 予定もない。 「自由」と言えば自由なはずなのに、なぜか落ち着かない。

朝起きても、今日やるべきことが明確にない。 未来は白紙なのに、その白さが少し不安で、どこを向いていいのかわからない。

きっとこの感覚、経験された方も多いのではないでしょうか。


◾️ 思いがけない声かけと、揺れ動く気持ち

そんな宙ぶらりんな日々の中、 前職のテナント内で顔見知りだった、まったくの異業種の店舗オーナーさんから、思いがけず声をかけていただきました。

「うちで働かない?」

突然の一言。 正直、少し心が動いたのも事実です。

まったく新しい業界。 新しい環境。 ゼロからのスタート。

でも同時に、心の奥から静かに浮かび上がってきたのは、 **どうしても消えなかった“糸偏業界への未練”**でした。


◾️ やっぱり、洋服が好きだった

改めて考えてみると、 私にとって洋服は、ただの「商品」ではありません。

着ることで気持ちが切り替わったり、 誰かとの思い出がよみがえったり、 背中を押してくれる存在だったり。

洋服って、人の人生にそっと寄り添う、不思議な力を持っています。

そんな洋服を生み出す背景には、 糸があり、布があり、 それを作る人たちの想いがあります。

「やっぱり、もう一度この世界に戻りたい」

そう腹をくくり、 私は繊維業界一本勝負の職探しを始めることにしました。


◾️ 見慣れた第二の故郷が、実はすごかった

就職活動を地元中心で進める中で、 私はあることに気づきます。

「……あれ? この地域、繊維、めちゃくちゃすごくない?」

私の暮らす群馬県太田市を中心に、 伊勢崎市、前橋市、桐生市、館林市。 少し足を伸ばせば、栃木県の足利市、佐野市。

この一帯、実は明治から昭和にかけて 日本有数の繊維産業集積地だったのです。


◾️ 上毛かるたが語る、繊維の記憶

群馬県民ならおなじみの「上毛かるた」。 ここにも、繊維の歴史がしっかり刻まれています。

・ 「銘仙織出す 伊勢崎市」
・ 「桐生は 日本の機どころ」
・ 「県都前橋 生糸の市」

そして忘れてはならないのが、 世界遺産にも登録された 「日本で最初の富岡製糸場」。

何気なく覚えていた札が、改めて見ると、 なんとも誇らしく感じられるから不思議です。

上毛かるた

◾️ 繊維の神様が集まる土地

さらに調べていくと、 織物の神様を祀る「織姫神社」が、 全国に4社しかない中で、 そのうち3社がこの周辺地域にあるという事実も知りました。

これはもう、 「繊維の聖地」と言ってもいいのではないでしょうか。

太田市では、かつて編み物の製造も盛んだったという話も耳にしました。

糸と布に育てられてきた土地。 そんな場所で、 もう一度自分の人生を紡ぎ直せるかもしれない。

そう思うと、不思議と前向きな気持ちになれました。


◾️ 職安へ向かう朝の、ちょっとした覚悟

いよいよ本格的な職探し。 私は車を走らせ、職業安定所――いわゆる職安へ向かいました。

希望勤務地は、 群馬・栃木の車通勤圏内7市。

太田、伊勢崎、前橋、桐生、館林、足利、佐野。 心の中で勝手に「繊維シティ・セブン」と名付けながら、 求人票に目を通します。


◾️ メンズファッションへのこだわり

まず探したのは、 やはりメンズファッション関連の仕事。

私は昔からメンズ服が好きで、 自分でも着れるので見て想像しているだけでワクワクしてしまうタイプです。

ただ、現実はなかなか厳しい。 地方ではメンズ専門店自体が少なく、 求人もほとんど見当たりません。

アパレルメーカーも都内集中型。 通勤圏内では難しい状況でした。


◾️ 視野を広げた先に見えた道

そんな中、ふと目に留まったのが、

・ 太田市のインテリア&寝具メーカー
・ 足利市のインナーメーカー

どちらも営業職。

「洋服ではないけれど、 身にまとうもの、暮らしに寄り添うもの」

そう考えると、不思議と抵抗はありませんでした。

そして応募した結果、 足利市の 「〇〇編織株式会社」 から内定をいただくことができたのです。


◾️ 「編織」と書いて、どう読む?

ちなみにこの会社名。 最初に見たとき、私はごく自然に 「あみおり」と読んでいました。

正解は「へんしょく」。

……漢字、奥が深いですね。


◾️ 再び糸偏業界へ戻れた喜び

配属は営業職。 量販店などを担当する提案営業です。

正直、下着業界は未知の世界。 戸惑いがなかったと言えば嘘になります。

それでも、 また、糸偏業界で働ける という事実が、何より嬉しかった。

ハローワークに通い始めてから、わずか1カ月ほどで次が決まったのも、 今思えばかなり幸運だったと思います。


◾️ ご縁という、不思議な糸

人生には、自分ではどうにもできない 「ご縁」という糸があるのだと思います。

引っ張られるように出会い、 気づけば次の場所に導かれている。

今回の再就職も、 まさにそんな感覚でした。


◾️ 改めて気づいた、自分の原点

こうして再び糸偏業界に身を置き、 私は改めて実感しました。

――やっぱり私は、 洋服と、人と、 その背景にあるものづくりが好きなんだ、と。

洋服は、ただのモノではありません。 暮らしに寄り添い、文化をつなぎ、 人の心をそっと彩る存在です。


◾️ 地域の歴史が、仕事への誇りになる

地元の繊維産業の歴史を知れば知るほど、 自分の仕事に対する見方も変わっていきました。

「自分が携わっているこの業界には、 こんなにも長い物語があるんだ」

そう思えるだけで、 日々の仕事への向き合い方も、自然と前向きになります。


◾️ 次回予告|インナーの世界へ

ということで、 無事に再就職が決まったところで、 次回は「〇〇編織株式会社」での奮闘記をお届けします。

インナーの世界、 思っている以上に奥が深いんです。

どうぞ、お楽しみに。



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