2025.12.30:第14回 私の回顧録
人生の岐路
〜思いがけない曲がり角〜
こんにちは。
糸偏コラム「私の回顧録」第14回です。
人生とは、本当に不思議なものです。
自分では順調に進んでいるつもりでも、ある日突然、目の前に「通行止め」の看板が立ちはだかる。あるいは、思いもよらない脇道が、ふっと目の前に現れることもあります。
私にとっての大きな転機は、12年半勤めた会社の廃業でした。
それは予兆もなく、静かに、しかし確実に人生の流れを変える出来事でした。
それまでの私は、典型的な“仕事人間”。
朝から晩までアパレルの現場を駆け回り、スケジュール帳は黒い文字でびっしり。気づけば、休日も仕事のことばかり考えていて、心が完全にオフになる瞬間はほとんどありませんでした。
新婚旅行ですら後回し。
妻からは、「仕事と結婚したの?」と、冗談半分・本音半分の言葉を投げかけられる始末。
今思えば、それでも文句ひとつ言わず支えてくれたことに、感謝しかありません。
そんな生活が、会社の廃業という出来事をきっかけに、強制終了を迎えたのです。
◾️ 立ち止まることを、初めて自分に許した日
会社がなくなる――。
その事実は重く、正直なところ、しばらくは実感が湧きませんでした。
「これからどうするんだろう」
「次の仕事は?」
「年齢的にも、簡単じゃないよな」
そんな不安が頭を巡る一方で、心のどこかに、ほんのわずかな“余白”が生まれていることにも気づきました。
それは、**「一度、立ち止まってもいいんじゃないか」**という感覚でした。
走り続けてきたからこそ、初めて感じた“止まる勇気”。
そして私たちは、ずっと先延ばしにしていた新婚旅行――ハワイ行きを決めたのです。
仕事を失った直後の海外旅行。
冷静に考えれば、なかなか大胆な選択です(笑)。
出発前は、「このタイミングで行っていいのだろうか」と、少し後ろめたい気持ちもありました。
ですが、飛行機が離陸し、眼下に日本の街並みが小さくなっていくのを見た瞬間、
胸の奥で、何かがすっと軽くなったのを覚えています。
◾️ ハワイという場所が持つ、不思議な力
ハワイに降り立った瞬間、まず感じたのは空気の違いでした。
湿度、匂い、光の色、そして人の表情。
どれもが、日本で張り詰めていた心を、優しくほどいてくれるようでした。
「まあ、今は考えすぎなくていいか」
そんなふうに思えたのは、久しぶりの感覚だったかもしれません。
◾️ ノースショアへの憧れ
ただの観光では終われなかった理由
私がハワイに行きたかった理由はいくつかありますが、
その中でも大きかったのがノースショアの存在です。
ノースショア――
それは、単なる美しいビーチではなく、サーフィンの聖地。
とはいえ、ホノルルからノースショアまでは約100キロ。
しかも大会が開催されるかどうかは、波次第。
当日の朝にならないと決まらないという、なんとも気まぐれな条件です。
私は観光会社に電話をかけ、現地の人に話を聞き、
久しぶりに“営業マン魂”をフル稼働させて情報収集をしました。
◾️ 波の音が、心を洗ってくれた
ようやく辿り着いたノースショア。
ワイメアベイ、サンセットビーチ――
雑誌や映像で何度も見てきた風景が、目の前に広がっていました。
実際に立ってみると、写真では伝わらない迫力があります。
波の音は低く、重く、しかしどこか優しい。
まるで海そのものが語りかけてくるようで、自然と深呼吸している自分がいました。
◾️ 思わぬ出会い
レジェンドは、すぐそこにいた
サンセットビーチで、私は思わぬ人物を見かけます。
それが、ロブ・マチャド選手でした。
当時は現役の選手。
独特のアフロヘアーは、遠くからでもすぐに分かります。
「え、本人……?」
何度も映像で見てきたレジェンドが、普通にそこに立っている。
驚きと緊張で、結局声もかけられず、ただ眺めるだけ。
今でも時々思います。
「せめて “Hi” くらい言えばよかったな」と(笑)。
◾️ トリプルクラウン観戦
波と人の、真剣勝負
数日後、「パイプラインマスターズ開催」の情報が入り、再びノースショアへ。
すっかり“波追い生活”です。
日本人選手・脇田貴之選手の名前が、
会場アナウンスで「Wakita! Wakita!」と呼ばれるたび、
なぜか胸が熱くなりました。
さらに駐車場では、
当時まだ高校生だった大野修聖・大野仙雅兄弟の姿も。
今思えば、とんでもなく貴重な場面に立ち会っていたわけですが、
そのときはただ「元気な若者だなぁ」と思っただけでした。
競技が始まると、会場は一気に緊張感に包まれます。
自然を相手に、一瞬の判断で勝敗が決まる世界。
その姿に、ただただ見入っていました。
「……また、ちゃんとサーフィンやりたくなるな」
心の奥で、そんなスイッチが入った瞬間でもありました。
◾️ ホノルルマラソン
人が集まる場所には、力がある
旅の終盤、偶然にもホノルルマラソンと重なりました。
街全体が応援ムードに包まれ、そこにいるだけで胸が熱くなります。
ゴール付近で見かけたのが、谷口浩美選手。
あの独特なフォームと笑顔を見て、
「遠く離れた場所でも、日本人が頑張っている」
そんな当たり前の事実に、なぜか勇気をもらいました。
前夜祭のフラダンスやウクレレの音色も、
心にじんわり染み込んできます。
◾️ メローなひと時
何もしない贅沢
こうして振り返ると、この旅は
心と身体をまるごとリセットする時間でした。
日差しの下で食べたパイナップルの甘さ。
海風に吹かれながらうたた寝した午後。
道端でふと見上げた虹。
どれも特別な出来事ではないのに、
今でもはっきりと思い出せる。
それこそが、「メローなひと時」だったのだと思います。
◾️ 人生の助走期間として
12年半、走り続けてきた私にとって、
このハワイ旅行は人生の助走期間でした。
肩の力を抜き、
自分を見つめ直し、
「次に、どう生きるか」を考える時間。
何も決めなくてもいい。
ただ、感じるだけでいい。
そんな時間が、次の一歩を支えてくれたのです。
◾️ 次回予告|現実へ戻る日々
さて、南国の余韻も束の間。
次回はいよいよ、**「職探し編」**です。
履歴書と向き合う日々。
再就職はうまくいったのか。
そして、どんな出会いが待っていたのか。
人生は、まだ続きます。
どうぞ、次回もお楽しみに。