2025.12.27:第11回 私の回顧録
バイヤー編 Prat5
〜総まとめ〜
こんにちは。
糸偏コラム「私の回顧録」第11回です。
今回は、これまで数回にわたってお届けしてきた「バイヤー編」の総まとめになります。
まず最初に、少しだけ視点のお話をさせてください。
この連載で綴ってきたバイヤー時代のエピソードは、当時の私が現場で必死にもがきながら考えていたことがベースになっています。
正直に言えば、余裕なんてまったくなく、日々の数字や在庫、売場の状況に追われながら、「これで合っているのか?」と自問自答する毎日でした。
一方で、こうしてキャリアを重ねた“今の自分”が振り返ると、
「あのとき、よくやっていたな」と思うこともあれば、
「今なら、こう考えるな」と感じる部分もたくさんあります。
今回の総まとめでは、
当時の自分の視点を大切にしながら、キャリアを積んだ今だからこそ見えることも、そっと重ねてお話ししていきます。
これは決して「昔の自分を否定する」ためではありません。
むしろ、必死に走っていたあの時間があったからこそ、今の自分がある。
そんな気持ちで、このバイヤー総集編を書いています。
◾️ 改めて振り返る「バイヤー編」これまでの道のり
ここまでのバイヤー編では、以下のようなテーマをお話ししてきました。
・ バイヤーという仕事の基本と現実
・ 商品力をどうやって身につけていったか
・ ファッション予測と仕入の関係
・ 売れ筋商品は「見つける」のではなく「作る」もの
・ 数字と感覚、その間で揺れながら判断する日々
どれも派手な成功談ではありません。
むしろ、失敗や反省、迷いの方が多かったかもしれません。
でも、今振り返ると、その一つひとつが
「バイヤーとは何者か?」を理解するための大切なプロセスだったと感じています。
◾️ バイヤーって、結局なにをしている人?
「バイヤーって、服を選んで買う人でしょ?」
今でも、こう聞かれることがあります。
たしかに、間違いではありません。
でも、それは“仕事のほんの入り口”に過ぎないんです。
実際のバイヤー業務は、こんな感じでした。
・ お客様のニーズを想像し
・ 商品ラインナップを組み立て
・ 価格の落としどころを探り
・ 販売計画を立て
・ 在庫を管理し
・ 結果を検証して、次に活かす
まさに、商品を軸にした総合プロデュース業。
当時の私は、
「なんでこんなに考えることが多いんだ…」
と頭を抱えることも多々ありましたが、今思えば、
この“考え続ける仕事”こそがバイヤーの本質だったのだと思います。
◾️ 商品計画:「売れる前」の8割は、ここで決まる
お客様の「欲しい」は、数字の奥にある
商品計画は、バイヤー業務のスタート地点であり、最重要ポイントです。
当時の私は、
「トレンドを押さえなきゃ」
「前年実績を超えなきゃ」
と、どちらかと言えば“外側”の情報に振り回されがちでした。
でも、経験を重ねた今なら、こう言えます。
一番大事なのは、「そのお客様は、どんな日常を生きているか」を想像すること。
年齢、性別、価格帯だけでは足りません。
どんな朝を迎え、どんな場所へ行き、どんな気持ちで服を選ぶのか。
その解像度が上がるほど、商品計画の精度は確実に上がります。
その上で、
日本の合繊メーカー、紡績メーカーの動きと照らし合わせる。
◾️ シーズンテーマは「判断軸」
シーズンテーマを決めることは、
自分自身の判断を助ける“背骨”をつくる作業でした。
売場で迷ったとき、
「この商品、今季のテーマに合っているか?」
と立ち返る場所があるだけで、ブレは格段に減ります。
当時は直感的にやっていた部分も多かったですが、
今ならもっと言語化して共有できたな、と思う場面もあります。
◾️ 販売計画|売れるのを「待つ」のではなく、「迎えにいく」
販売計画は、商品に命を吹き込む工程です。
どんなに良い商品でも、
・ 出すタイミング
・ 見せ方
・ 伝え方
を間違えれば、簡単に埋もれてしまいます。
当時の私は、天候に一喜一憂しながら、
「まだ寒い」「急に暑い」
と、空を見上げては悩んでいました(笑)。
今思えば、それも大切な感覚でした。
ファッションは、数字だけではなく“空気”で動く。
この感覚は、現場でしか養えません。
◾️ 在庫管理|一番地味で、一番怖い仕事
在庫管理は、正直に言って一番しんどい業務でした。
売れ残った在庫を見るたびに、
「判断ミスだったかな…」
と、自分を責めた夜もあります。
在庫は、失敗の証拠ではなく、学びの痕跡。
なぜ残ったのか。
なぜ動かなかったのか。
そこに向き合うことで、次の精度が上がっていきます。
◾️ バイヤー業務は「PDCAを回し続ける仕事」
商品計画 → 販売計画 → 在庫管理。
この流れは、一度やって終わりではありません。
何度も、何度も、ぐるぐる回す。
ときには失敗しながら、少しずつ精度を上げていく。
当時の私は、
「正解を出さなきゃ」と思いすぎていました。
でも今なら、こう思います。
大事なのは、正解を出すことより、修正できること。
◾️ 今だから思う、バイヤーという仕事の本質
バイヤーの仕事は、
「センスの仕事」と言われがちですが、
実際はとても“人間的”な仕事です。
迷い、悩み、決断し、責任を取る。
そしてまた、次に進む。
当時の自分は、必死でした。
でも、その必死さがあったからこそ、
今、こうして言葉にできています。
◾️ おわりに:未来のバイヤーさんへ
ここに書いたことすべてを、
当時の私が完璧にできていたわけではありません。
当時の私が完璧にできていたわけではありません。
むしろ、できなかったことの方が多い。
でも、それでよかったと、今は思っています。
・ これからバイヤーを目指す人
・ 今まさに悩みながら現場に立っている人
がいたら、伝えたいことがあります。
迷うのは、ちゃんと考えている証拠です。
これにて「バイヤー編」は一区切り。
次回からは、また新たな職務と経験のステージへ進んでいきます。
引き続き、
「私と洋服との関わり」を、
肩の力を抜いてお付き合いいただけたら嬉しいです。
では、また次回のコラムで。