グループ企業
〜リアルな仕入れの現場17〜
みなさん。こんにちは。
前回のコラムでは、オーダースーツ店舗の現場について、課題やリアルな状況をお伝えしました。 現場には常に緊張感があり、その裏側には責任の重さ、そしてお客様に喜んでいただけたときの達成感がありました。
仕入れの立場から見ても、店舗は単なる販売の場ではなく、すべての価値が試される最前線です。
そして今回は、前回に引き続き、オーダースーツ店舗との関わりについて、もう少し踏み込んでお話ししたいと思います。

グループ企業
〜リアルな仕入れの現場17〜
みなさん。こんにちは。
前回のコラムでは、オーダースーツ店舗の現場について、課題やリアルな状況をお伝えしました。 現場には常に緊張感があり、その裏側には責任の重さ、そしてお客様に喜んでいただけたときの達成感がありました。
仕入れの立場から見ても、店舗は単なる販売の場ではなく、すべての価値が試される最前線です。
そして今回は、前回に引き続き、オーダースーツ店舗との関わりについて、もう少し踏み込んでお話ししたいと思います。

◾️ バイヤーの役割は「武器を渡すこと」
バイヤーの仕事とは何か。 それを一言で表すならば、「店舗に武器を渡すこと」だと思います。
ただし、それは単に良い商品を用意するという意味ではありません。
店舗全体として、
・ どんな価格帯で構成するのか
・ どの商品を主軸にするのか
・ どの商品で売上を作り、どの商品で利益を確保するのか
こうした全体設計があってこそ、商品は“武器”として機能します。
◾️ 「品揃え」は設計である
品揃えは、単なるラインナップではありません。 それは設計です。
例えば、 目を引く商品(見せる商品) 確実に売上を取る商品 利益率の高い商品
これらをバランスよく配置することで、初めて店舗は機能します。
そして、その意図を店舗が理解しているかどうかが、結果を大きく左右します。
〜思い通りにいかない現場〜
しかし、どれだけ綿密に設計しても、現場は思い通りには動きません。
それは、現場には現場のリアルがあるからです。
今回お話しするのは、まさにそんな「想定外」が起きた出来事です。

◾️ 勝負をかけた企画
それは、グループの仕入れを始めて3年目のことでした。
インポート生地を中国の代理店を通して仕入れ、 そのまま中国の縫製工場に送り、現地で縫製する。
いわゆる、 **「インポート生地 × 中国縫製」**という組み合わせです。
〜価格競争力という強み〜
このスキームには、大きなメリットがありました。
・ 物流コストの削減
・ 関税負担の最適化
・ 縫製コストの圧縮
これらによって、非常に競争力のある商品を作ることができました。
さらに、インポート生地のブランド力もあり、 「売れる商品」として大きな期待をかけていました。
◾️ 期待を込めた数量発注
そのため、通常よりも踏み込んだ数量を発注しました。
いわば、“勝負をかけた商品”です。 売上・利益ともに牽引する存在として位置づけていました。
〜現場で起きていた異変〜
ところが、ある店舗で異変が起きていました。
その商品で受注した数着に、縫製ミスが発生。 結果として、クレームにつながってしまったのです。
◾️ 見えない「販売停止」
問題はその後でした。
その店舗では、 その商品を販売しなくなっていたのです。
表立って「販売停止」と言われたわけではありません。 しかし、実質的には提案されていなかったのです。
〜現場の判断〜
話を聞くと、理由は明確でした。
生地自体は非常に良い。 しかし、その分デリケートで、縫製の粗が目立ちやすい。
結果として、クレームにつながりやすい。 だから提案しない。
これは、店舗としては当然の判断です。
◾️ バイヤーとの認識のズレ
一方で、バイヤーとしては、 「売れる商品」として位置づけていたものです。
価格競争力もあり、ブランド力もある。 まさに主力商品になるはずでした。
しかし店舗にとっては、 **“リスクのある商品”**になっていたのです。
◾️ 現場の工夫と苦悩
さらに興味深かったのは、 その生地自体を否定していたわけではない点です。
どうしても販売する場合は、 国内縫製に切り替えて提案していました。
つまり、 「売りたいが、安心して売れない」 というジレンマがあったのです。

◾️ 苦渋の判断:インセンティブ施策
この状況を受けて、私は一つの判断をしました。
その商品に対して、**報奨金(インセンティブ)**を設定したのです。
正直に言えば、理想的なやり方ではありません。 しかし、仕掛けた商品を止めるわけにはいかない。
苦渋の決断でした。
〜結果と安堵〜
結果として、 なんとか想定していた水準まで消化することができました。
数字としては成功です。 しかし、心の中には引っかかるものが残りました。
◾️ 本質的な問題への向き合い
このままではいけない。 そう感じ、工場に対して改善を強く求めました。
・ 縫製品質の見直し
・ 検品体制の強化
そして何より、 「一着のミスがブランド全体の不信につながる」 という現実を伝えました。
〜上級ラインという選択〜
さらに、抜本的な対策として、 縫製の上級ラインを新たに設けることにしました。
コストは上がります。 しかし、それによって店舗が安心して販売できる。
それこそが、本当の意味での改善だと考えました。
◾️ 「売るのは人」であるという事実
この出来事から、強く学んだことがあります。
それは、 商品を売るのは人であるということです。
どれだけ良い商品でも、 販売する側が不安を感じていれば売れません。
◾️ バイヤーの本当の仕事
バイヤーの役割は、商品を揃えることだけではありません。
・ 店舗の不安を取り除くこと
・ 安心して提案できる環境を作ること
それもまた、重要な仕事です。
◾️ 「一着のスーツの重み」を再認識
前回もお伝えしましたが、 この出来事で改めて感じたのは、 一着のスーツの重みです。
お客様にとっては、特別な一着。 だからこそ、一つのミスが大きな意味を持つ。
◾️ 忘れられない教訓
この経験は、今でも強く心に残っています。
バイヤーの視点、店舗の視点、そしてお客様の視点。
それぞれが交差する中で、初めて“商品”は成立する。
そのことを、身をもって学びました。
◾️ 今回のまとめ
今回は、店舗との関わりの中で起きた、 一つの象徴的な出来事をご紹介しました。
仕入れは、単なる調達ではありません。 人と人の間にある、信頼の仕事です。
◾️ 次回予告
少し前に、縫製工場の仕入れや営業についてお話ししました。
次回は、その縫製工場で実際に経験した出来事について、 よりリアルな視点でお届けしたいと思います。
現場の奥にある、もう一つの“リアル”。 ぜひ楽しみにしていてください。
◀︎◀︎◀︎ 【2026年3月18日】 【2026年3月20日】 ▶︎▶︎▶︎
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