2026.03.31:第105回 私の回顧録
中国縫製の日本営業4
〜ウェブサイト開設後〜
みなさん。こんにちは。
前回のコラムでは、「信頼をどう作るか」というテーマのもと、
会社案内の作成、そしてウェブサイト開設までの流れについてお話ししました。
中国縫製というだけで不安を持たれてしまう現実の中で、
少しでも「見える情報」を増やし、安心感を持っていただく。
そのために、
・ 会社案内を整備し
・ 採寸マニュアルを見せ
・ 取引の流れを整理し
・ そしてウェブサイトという形にまとめる
という段階を、一つ一つ積み上げてきました。
ただ、ここで改めて強く感じたのは、
**「作っただけでは何も変わらない」**という厳しい現実です。
どれだけ良いものを作っても、
見てもらえなければ意味がない。
理解されなければ、価値は伝わらない。
ウェブサイトはあくまで“入口”であり、
そこからどう活用するかによって、結果は大きく変わります。
今回のテーマは、
「ウェブサイト開設後、実際に何が起きたのか」
そして、
「信頼はどうやって現実の取引に変わっていくのか」
理屈ではなく、実際の現場で起きたことをベースに、
できるだけリアルにお伝えしていきます。
◾️ ウェブサイト完成後の“現実的なスタート”
ホームページが完成した時、
正直なところ「これで一気に広がるのではないか」という期待がありました。
時間をかけて作り込んだ分、
どこかで“反応が出るはずだ”という思いもありました。
しかし、現実はそんなに甘くありません。
作っただけでは、誰にも見られません。
知られなければ、存在していないのと同じです。
検索されなければ表示されない。
URLを知らなければ辿り着けない。
つまり、
ウェブサイトは完成した瞬間ではなく、そこからが本当のスタートだったのです。
◾️ 最初の一手は“攻めの営業”
そこでまず行ったのが、
メールと電話による営業アプローチでした。
すでにアドレスがわかっている潜在顧客に対して、
一件一件、丁寧にメールを送りました。
文章の内容も、ただの売り込みではなく、
「どんな会社なのか」「何ができるのか」が伝わるように工夫しました。
そして、その後に電話でフォローを入れる。
メールだけでは流されてしまうことも多いため、
実際に声で補足することで、記憶に残す。
非常に地道ですが、
最も確実で、かつ誠実さが伝わる方法でもありました。
◾️ メールからウェブへ“導線をつくる”
メールの中では、単なる営業ではなく、
ウェブサイトへの導線づくりを意識しました。
「詳しくはこちらをご覧ください」
という自然な流れで、ホームページへ誘導する。
ここで重要なのは、
無理にクリックさせるのではなく、
“興味を持てば見たくなる”構成にすることでした。
つまり、
メールは“入口を作る役割”、
ウェブサイトは“理解を深める役割”。
この役割分担を明確にすることで、
営業の流れに一貫性を持たせました。
◾️ 採寸マニュアルの“部分公開”という工夫
さらに工夫したのが、
採寸マニュアルのダウンロード機能です。
ただし、すべてを公開するのではなく、
あえて一部だけを見せる形にしました。
これは、
・ 興味を引くため
・ 信頼感を高めるため
・ 次のアクションにつなげるため
という複数の意図があります。
全部を見せてしまうと、それで完結してしまう。
しかし一部であれば、「もう少し知りたい」と思ってもらえる。
この“余白”が、問い合わせへとつながる重要なポイントでした。
◾️ 初期段階での“確かな手応え”
こうした取り組みを続けていく中で、
少しずつですが反応が出始めました。
実際にホームページを見て、
興味を持っていただいた企業も現れ、
取引へとつながったケースも出てきました。
件数としては決して多くはありません。
しかし、ゼロからのスタートを考えれば、
これは大きな前進でした。
「ウェブサイトは意味があった」
そう実感できた瞬間でもありました。
◾️ しかし感じた“決定的に足りないもの”
ただし、ここで新たな課題に気づきます。
「まだ足りない」
という感覚です。
問い合わせはある。
興味も持ってもらえる。
しかし、最終的な判断に至らない。
つまり、
“決め手”がないのです。
この違和感が、次の行動のきっかけになりました。
◾️ なぜ中国工場と取引するのか?
改めて考えたのは、
「なぜ中国工場を選ぶのか?」という本質的な問いでした。
営業として提案する以上、
相手にとって納得できる理由が必要です。
なんとなく安い、では通用しません。
なんとなく良さそう、でも選ばれません。
そこで改めて整理したとき、
最初に浮かんだのが「価格」でした。
◾️ 価格という武器の“限界”
確かに、中国縫製の最大の強みは価格です。
しかし当時は、
・ 中国国内の工賃上昇
・ 円安の進行
という要因が重なり、
日本との価格差は徐々に縮まっていました。
以前のような
「圧倒的に安い」という状況ではなくなっていたのです。
つまり、
価格だけでは勝負できない時代に入っていました。
◾️ 品質に対する“イメージの壁”
品質についても課題がありました。
仮に同等レベルの製品を作れたとしても、
受け取り側の印象はすぐには変わりません。
「中国製=不安」というイメージは、
根強く残っていました。
この“見えない壁”は、
スペック以上に大きな影響を与えます。
◾️ 納期という条件のジレンマ
納期は、日本と同等レベルで対応することも可能でした。
しかし、その場合は都度発送となり、
送料が大きな負担になります。
まとめて送ればコストは下がる。
しかし納期は延びる。
このバランスは非常に難しく、
提案としても中途半端になりやすいポイントでした。
◾️ 結局残るのは“価格だけ”という現実
価格・品質・納期を整理してみると、
最終的に残るのはやはり「価格」でした。
しかしその価格も、
決定打になるほどの強さはない。
この状況は、営業として非常に苦しいものでした。
◾️ 生地問屋との連携という挑戦
そこで考えたのが、
生地問屋との連携です。
既存の流通に乗せることで、
自然な形で広げていく。
いわば“横展開”の発想でした。
◾️ しかし市場の反応は想定外
しかし実際には、
テーラー側の反応は想定と異なりました。
価格メリットに対する関心が、
思っていた以上に低かったのです。
◾️ テーラーのビジネスモデルとの違い
多くのテーラーは、
単価重視のビジネスモデルです。
着数を増やすより、
価値を高める。
この考え方が、
価格訴求とのズレを生んでいました。
◾️ 自分の経験とのギャップ
前職では、
着数を追うモデルでした。
だからこそ価格が武器だった。
しかし、環境が変われば常識も変わる。
この違いを、強く実感しました。
◾️ 生地問屋ルートの断念
結果として、このルートは断念しました。
期待していただけに、
悔しさもありました。
しかし、ここで止まるわけにはいきませんでした。
◾️ 地道な営業への回帰
再び原点に戻り、
一件一件アプローチを続けました。
地道ですが、
ここにしか答えはありませんでした。
◾️ 取引してくれる先の“共通点”
続ける中で、
ある共通点が見えてきました。
それは、
独自性を重視するテーラーでした。
◾️ 日本の量産工場の“制約”
日本の工場は効率重視。
だからこそ柔軟性が低い。
ここに制約がありました。
◾️ 中国工場の“思わぬ強み”
一方、中国工場は個別対応が前提。
結果として、
柔軟性という強みが生まれていました。
◾️ “できないことができる”という価値
ミスはある。
しかし、それ以上に
「できること」がありました。
それが、新たな価値になりました。
◾️ まとめ
今回の経験を通して、最も強く感じたことがあります。
それは、
**「強みは作るものではなく、見つけて育てるものだ」**ということです。
最初は価格しかないと思っていました。
しかし、その価格すら武器にならない場面がありました。
そこで初めて、
「相手にとっての価値とは何か」を考え直すことになります。
そして見えてきたのが、
“他ではできないことができる”という価値でした。
さらに重要なのは、
弱みの捉え方です。
非効率だった個別対応。
それは問題でもありましたが、
同時に柔軟性でもありました。
つまり、
弱みは見方次第で強みに変わるのです。
ビジネスとは、スペックの勝負ではありません。
どう使い、どう見せるかで価値は決まります。
今回の経験は、
その本質を強く教えてくれました。
◾️ 次回予告
次回は、この“見つけた武器”を、
どのように営業に活かしていったのかをお伝えします。
一つの仕事にフォーカスしながら、
さらに深くリアルを掘り下げていきます。
ぜひ、次回も楽しみにしていてください。