2026.03.09:第10回 素材のちから
群馬で感じた 〜シルクの未来〜
前回の告知では、
「次回の舞台は綿(コットン)へ。」
そんなお話をしていました。
ところが、かなり時間が経ってしまったうえに、今回のテーマは急遽変更です。
予定していたコットンではなく、もう一度「絹(シルク)」の話をさせていただきたいと思います。
「なぜ、またシルクなのか?」
その理由は、とてもシンプルです。
昨日、あるイベントに足を運び、そこで聞いたお話が、どうしても頭から離れなかったからです。
これは、素材の世界に関わってきた一人として、
「いま伝えておかなくてはいけないことではないか」
そんな思いに駆られ、急遽このコラムを書くことにしました。
今日は、そのイベントで出会ったものづくりと、
そして日本のシルクの未来についてのお話です。
◾️ 群馬で開催されたファッションイベント
そのイベントの名前は
「Gunma Fashion Market」
群馬県高崎市にあるGメッセ群馬で、
2026年3月7日〜8日に開催されていました。
イベントのコンセプトは、
「あした、思わず語りたくなる1着を。」作り手の思いに触れる展示・販売会です。
半月ほど前、たまたまインスタグラムでこのイベントを知りました。
内容を見ると、群馬県内の素材・染色・縫製など、地域のものづくりに関わるブランドが集まる展示会とのこと。
私は群馬出身ということもあり、
全国規模の展示会とはまた違う、地元ならではの温かい空気を感じました。
これはぜひ行ってみたい。
そんな思いで足を運んできました。
◾️ 地元だからこそ感じる距離の近さ
会場に入ってまず感じたのは、
とても「距離の近いイベント」だということです。
巨大な展示会ではありません。
出展ブランドの数も、それほど多くはありませんでした。
ですが、その分、一つ一つのブランドとゆっくり話ができます。
商品を見るだけではなく、
作り手の思いや背景を直接聞くことができる。
それがとても印象的でした。
素材、縫製、染色。
それぞれの分野で、地域の技術が静かに息づいている。
そんな空気がありました。
◾️ 印象に残った3つのブランド
多くのブランドを拝見しましたが、
特に印象に残ったのが次の3つです。
▶︎ to touch
▶︎ SG BASE
▶︎ masoom
それぞれに、とても魅力的なものづくりがありました。
◾️ 印象に残った3つのブランド
多くのブランドを拝見しましたが、
特に印象に残ったのが次の3つです。
▶︎ to touch
▶︎ SG BASE
▶︎ masoom
それぞれに、とても魅力的なものづくりがありました。
◾️ 触れた瞬間に伝わるニットの魅力「to touch」
まず最初にご紹介したいのが
「to touch」
このブランドは、群馬県太田市にあるニットメーカーが展開するブランドです。
太田市といえば、自動車産業のイメージが強い町ですが、
実はニット産業も根付いている地域です。
このブランドのニットは
**OTA KNIT(オオタニット)**と呼ばれる取り組みの中で生まれています。
OTA KNITとは、
太田市のニット職人たちが丁寧に作り上げる
MADE IN OTA JAPANのニット製品です。
ブランド名の「to touch」には、
「触れたくなる、心を動かす」
そんな意味が込められているそうです。
◾️ タッチの良さが語るものづくり
実際に商品を触らせていただきました。
すると、すぐにわかります。
とにかくタッチが良い。
柔らかく、軽く、そして優しい。
触った瞬間に
「ああ、これは丁寧に作られているな」
と感じるニットでした。
発色もとても美しく、
全体にやわらかな空気感があります。
こういう服は、
写真だけでは伝わらないんですよね。
実際に触れて初めてわかる魅力があります。
お忙しい中、いろいろお話を聞かせていただき、
本当にありがとうございました。
地元のものづくりとして、これからも応援しています。
◾️ 工業の町から生まれたアウトドアブランド「SG BASE」
次に印象に残ったのが
「SG BASE」
こちらも太田市のブランドです。
太田市は、自動車関連産業が集まる工業の町。
ものづくりの技術が非常に高い地域です。
SG BASEは、そんな町で生まれたアウトドアブランドです。
コンセプトは「日常とアウトドアをつなぐブランド」
◾️ 自動車技術から生まれたアップサイクル
このブランドが面白いのは、
その背景にある技術です。
実は、もともと自動車の内装・外装部品を製造するメーカーが母体になっています。
その技術を活かしながら、
新しいブランドとして立ち上がったのがSG BASEです。
さらに特徴的なのが、
素材の使い方です。
製品には、
自動車内装材の端材が使われています。
つまり、
アップサイクル
です。
本来なら廃棄されてしまう素材を、
職人の縫製技術で新しい製品として生まれ変わらせる。
とても魅力的な取り組みだと感じました。
会場では地元の話でも盛り上がり、
とても楽しい時間でした。
今後の展開も期待しています。
◾️ 桐生の織物文化を伝える「masoom」
そしてもう一つご紹介したいのが
「masoom」
このブランドは、群馬県桐生市から生まれています。
桐生といえば、
日本でも有名な織物の町です。
その歴史はなんと
1300年以上とも言われています。
そんな伝統の産地から生まれたブランドです。
◾️ 織物とレザーの美しい組み合わせ
見せていただいたのは、
桐生の織物 × 栃木レザー
を組み合わせたバッグでした。
これがとても素敵でした。
織物の美しい表情と、
レザーの存在感。
そのバランスがとても良い。
伝統の素材を、
現代のデザインに落とし込む。
産地の新しい可能性を感じました。
これからもぜひ応援したいブランドです。
◾️ そして最後に聞いた「蚕の話」
さて、ここまでいくつかのブランドをご紹介しましたが、
今回のコラムを書くきっかけになったのは、
実はブランドではありません。
イベント会場で行われていた
ワークショップでした。
そこでお話をされていた方のお話が、
とても印象に残りました。
名刺もいただきましたが、
個人名はここでは伏せさせていただきます。
その方は、
「SILK OF LIFE」
というプロジェクトを運営されている方でした。
◾️ 日本の蚕糸業は危機的状況にある
その方のお話の中で、
とても衝撃的だったことがあります。
それは、
日本の蚕糸業が危機的状況にある
ということでした。
古代から日本の文化とともに歩んできた
養蚕と製糸。
着物文化だけではありません。
日本の産業史の中でも、とても大きな役割を果たしてきました。
ですが、今その産業は
本当に厳しい状況にあるそうです。
◾️ 日本の蚕糸業は危機的状況にある
明治時代、
日本の基幹産業の一つが
養蚕・製糸業
でした。
日本の生糸は世界中に輸出され、
日本経済を支える重要な産業だったのです。
日本が世界一のシルクの生産量を誇っていた時もありました。
しかし今、その産業が消滅の危機にある。
これは以前から情報としては知っていました。
ですが、
実際にその方から話を聞くと、
その深刻さは想像以上でした。
◾️ あと5年で大きな分岐点
その方のお話では、
あと5年くらいで大きな分岐点を迎える
とのことでした。
つまり、
日本のシルクが
このまま消えてしまうのか。
それとも未来へ残せるのか。
その判断が、
近い将来に迫っているということです。
養蚕農家は年々減少しています。
人手不足、後継者不足、
そして収益構造の問題。
さまざまな課題が重なっています。
◾️ 1000年後へシルクをつなぐプロジェクト
そこで立ち上がったのが
SILK OF LIFE
というプロジェクトです。
この取り組みは、
養蚕を体験してもらうことで
1000年後の未来へシルクをつなぐ
というものです。
ただ商品を売るのではなく、
体験する
ことを大切にしています。
◾️ 自宅で蚕を育てる体験
その取り組みの一つが、
自宅で10頭の蚕を育てる
2か月間の体験プログラム
です。
自分の家で蚕を育てる。
なかなか想像できない体験ですよね。
でもそれによって、
命の循環
素材の生まれる過程
自然との関係
そういったことを実感できるのだそうです。
◾️ 私もサポーター登録しました
もう一つ教えていただいたのが
国産繭・生糸サポーター募集
です。
これは
一般財団法人大日本蚕糸会
が、日本のシルクを守るために行っている取り組みです。
お話を聞いて、
私はすぐに思いました。
これは、
微力でも応援したい。
そう思い、
先ほどサポーター登録をさせていただきました。
◾️ 日本のシルクを未来へ
もし今、行動しなければ
日本の絹は無くなってしまう
そんなところまで、
状況は差し迫っているそうです。
これは決して大げさな話ではありません。
素材の世界に関わる人間として、
この現実を伝えていくことも大切な役割だと思いました。
◾️ シルクを未来へつなぐために
もしこのお話に少しでも興味を持っていただけた方は、
ぜひ以下をご覧ください。
そんなところまで、
状況は差し迫っているそうです。
これは決して大げさな話ではありません。
素材の世界に関わる人間として、
この現実を伝えていくことも大切な役割だと思いました。
▶︎ 国産繭・生糸サポーター募集
▶︎ SILK OF LIFE:蚕の飼育体験プログラム
こちらもとても興味深い取り組みです。
◾️ 素材のちからを未来へ
今回のイベントで改めて感じたことがあります。
それは
素材の力
です。
ニットも
織物も
アップサイクルも
シルクも
すべてのものづくりは
素材から始まります。
そしてその素材の背景には、
人の営みがあります。
◾️ 次回予告
次回からは、改めて
綿(コットン)
についてお話ししていく予定です。
ただし、今回のように
急遽テーマが変わることもあるかもしれません。
素材の世界は、
思いがけない出会いで広がっていくものです。
これからも、そんな出会いを大切にしながら
コラムを書いていきたいと思います。
どうぞ次回もお楽しみに。