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Textile Industry Column糸偏コラム:自由な視点
私の回顧録

2025.12.22:第6回 私の回顧録

マネージャーでの経験
〜育てる存在〜

こんにちは。
糸偏コラム「私の回顧録」第6回です。

前回は、転職初日の強烈な洗礼や、店長として初めて「仕掛けて売れる」という成功体験を味わったお話をしました。 今回はその続きとして、群馬県内3店舗を統括するゾーンマネージャーとしての経験についてお話ししたいと思います。

店長という立場から、さらに一歩引いた視点で店舗を見る役割へ。 この経験は、私の中で「仕事観」だけでなく、「人との向き合い方」を大きく変えてくれました。

育てる存在

◾️ 突然のゾーンマネージャー就任

入社から約1年半。 ある日、会社から告げられたのが、群馬エリア3店舗のゾーンマネージャー就任でした。

担当店舗は、太田市と館林市にある3店舗。 一見すると、キャリアアップのチャンスに聞こえますが、実情はなかなか厳しいものでした。

というのも、前任の店長たちはすでに全員退職。 店舗には明確なリーダーが不在で、売場の空気もどこか沈んでいました。

正直に言えば、 「これは…なかなか大変そうだぞ」 というのが、最初の印象でした。


◾️ 士気が下がった店舗の現実

実際に店舗を回ってみると、その状況は想像以上でした。

売場はどこか覇気がなく、 スタッフ同士の会話も最低限。 「売ろう」というより、「とりあえず回している」 そんな空気が漂っていました。

売上不振ももちろん問題でしたが、 それ以上に気になったのは、 スタッフの表情に自信がないことでした。

これは、商品や立地の問題だけではない。 そう直感的に感じました。


◾️ まず取り組んだのは「対話」

そこで私が最初に取り組んだのは、 何かを変えることではなく、話を聞くことでした。

「今週は何が売れた?」 「それ、どうして売れたと思う?」

売上報告ではなく、あくまで会話として。 答えが正解かどうかよりも、 自分の言葉で考えて話してもらうことを意識しました。

最初は、みんな少し戸惑っていました。 それも無理はありません。 それまで、そうした問いを投げかけられることが、ほとんどなかったのですから。


◾️ 売ることを「作業」にしないために

販売の現場は、忙しいとどうしても 「やることをこなすだけ」 になりがちです。

でも、本来の販売はそうではない。 売れた理由があり、 売れなかった理由がある。

その背景を考えることで、 次の一手が見えてくる。

私は、その感覚をスタッフと共有したいと思っていました。


◾️ 私が率先してやってみせる

とはいえ、 「考えよう」「やってみよう」 と口で言うだけでは、人はなかなか動きません。

だから私は、まず自分が率先して動くことにしました。

売れ筋商品の選定。 売場のレイアウト変更。 接客トークの組み立て。

すべてを「指示」するのではなく、 「こうやってみたらどうだろう?」 と、一緒に考え、一緒に試す。

マネージャーだからといって、 現場から離れるつもりはありませんでした。

率先

◾️ 小さな成功体験が空気を変える

そんな取り組みを続けていると、 少しずつ変化が現れ始めました。

ある日、スタッフから 「これ、私が考えた売り方で売れました!」 という報告があったのです。

そのときの、少し誇らしげな表情。 今でもよく覚えています。

「販売って、面白いですね」 「お客様に喜んでもらえると、嬉しいです」

そんな言葉が、自然と聞こえるようになりました。


◾️ 売場の雰囲気が変わっていく

不思議なもので、 一人が変わると、周りも少しずつ変わります。

声が出るようになり、 相談が増え、 売場に活気が戻ってくる。

数字以上に、 空気が変わったことが、何より嬉しかったです。


◾️ 「売れ筋」の思い込みに気づく

あるとき、 「今、何が売れていますか?」 と聞くと、ほとんどのスタッフが即答します。

でも、その答えが、 必ずしも実際の売上データと一致しているとは限りませんでした。

人は、自分が売った商品や、印象に残った商品を 「売れている」と思い込んでしまうものです。


◾️ データと感覚のすり合わせ

そこで私たちは、 POSレジのデータを一緒に確認するようにしました。

「実際はどうだった?」 「数字で見ると、こうなってるね」

正解だったら、しっかり褒める。 違っていたら、否定するのではなく、 「じゃあ、次は何を売りたい?」 と問いを投げる。

叱るよりも、 考える力を育てることを意識しました。


◾️ 売るための「体制」をつくる

売りたい商品が決まったら、次は どう売るかです。

どこに置くか。 どう見せるか。 どんな言葉で声をかけるか。

それを一緒に考え、 売れる体制を整えていきました。

そして、実際に売れると—— それはスタッフにとって、 何よりの自信になります。


◾️ 自信が行動を変える

一度「売れた」経験をすると、 スタッフの行動は明らかに変わります。

自分から声をかける。 売場を気にする。 工夫を考える。

「売らされている」から 「売りたい」へ。

その変化を間近で見られたことは、 マネージャーとして、何よりの喜びでした。


◾️ マネージャーとは何か

この経験を通して、 私の中でマネージャー像がはっきりしました。

それは、 支配する存在ではなく、育てる存在。

指示を出す人ではなく、 考えるきっかけをつくる人。

成果を独り占めする人ではなく、 成長を一緒に喜べる人。


◾️ 誰かの成長を喜べる幸せ

自分が売れて嬉しい、という喜びとは違い、 誰かが成長する姿を見て嬉しくなる。

その感覚は、 これまでの仕事人生で、初めて味わうものでした。

「マネージャーって、こういう仕事なんだな」 そう実感できた瞬間でした。


◾️ 人を育てることは、自分を育てること

人に教えるためには、 自分の考えを言葉にしなければなりません。

なぜそうするのか。 なぜそれが大切なのか。

説明する過程で、 自分の考えも整理され、 理解が深まっていきます。

人を育てることは、自分を育てること。 これは、この頃に身をもって学んだ教訓です。

人を育てることは、自分を育てること

◾️ 次回予告 〜次なる舞台は、バイヤーへ〜

こうして、販売現場とマネジメントの両方を経験した私に、 次なるステージが用意されていました。

それが、バイヤーという仕事です。

売る立場から、 「選ぶ立場」へ。

洋服との関わりが、 また一段、深くなっていくことになります。

そのお話は、次回のコラムでじっくりと。 どうぞ、楽しみにしていてください。



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